天女(アプサラス)の散華
吉 永 邦 治
一 九九八年の一月三十一日、東京の京王プラザホテルを会場に、ニューヨーク大菩薩禅堂金剛寺師家、嶋野榮道老師の「生命燃ゆるとき」という講演会があり、そ の会に出席した。講演の内容もさることながら、その講演台の横にあったカーネーションになぜか心ひかれて見ていた。講演後、幸運にも、そのカーネーション をプレゼントされた。喜びいさんで、自宅のある明石まで、持ち帰り、家にあるすべての花ビンに、赤、黄、ピンク、それぞれの色にわけ差し入れた。
普段、買いもとめた花は、四日~五日もすると、枯れてしまうのであるが、このカーネーションは、時が過ぎいくのにもかかわらず、ますます生々とした花を咲 かせっづけたのである。しかも、テレピン油などのたちこめるアトリエにおいておくと油のにおいを吸ってくれるのか、ドアをあけ、室に入るたびに、いい香り がしてくる あまりにも不思議なので、後日、どんな方が、この花を育てられたのか、きいてみると、やはり作り手のながい労苦のたまものであり、深い愛情を もって育てられた花であることがわかった。人間と植物というのは、どこかで一つの命でっながっていることを、この体験から思うのである。
偶然にも、花のプレゼントを受けたということは、天女によって天上からアトリエに、天の華を散花されたように思われてしかたがないのである。