作家と一体となった本来の姿

作家と一体となった本来の姿

城 としはる

初めて吉永さんに会ったのは、たしか短大講師控室だったと思う。吉 永さんは、被服コースの学生に意匠学を、私は手織り実習を担当していた。名刺代りにと『白と赤の十字路』をいただいた。その時一瞬どうしてもこの本と意匠 学とが結びつかなかった。まさか画家だとは思わなかったのだ。
帰りの電車の中で読み出すと、もうこれは止らない。この人は何者だろうかと限りない興味がわいて来て、あの分厚い本を気に読んでしまった。友人、知人にもこんな面白い人がいると勧めたものだ。
極楽橋という駅がある行ってみようと高野山へ行き、とうとう高野山大学を出たと。
この本には常人では冗談としか思えない事を、平気でこんこんと溢れるように文章になって出て来る。
それ以来、NHKのTVで飛天の解説で出られると知ると、じっと見つめ、個展にも出かけるようになった。
九州にはコレクターが居ることも知った。
絵が一人歩きするのではなく、作家と一体となった、本来の姿がそこにあると、吉永さんに出会って絵について考えるようになった。
美術やアートの世界ではいろいろなジャンルをつくり、勝手に柵を設けて、己を正当化しようとする傾向か見られるが吉永さんはどのジャンルにも属さない、自由奔放さが好きだ。吉永さんは、単なる画家ではない。
どこか少年のような所があり、いつまで経っても歳を取らない、ふところの深い所が魅力だ。私など、吉永山の登山口を入ったところでなかなか頂上を征服できそうにない。

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