楽しい行動人

楽しい行動人

金 子   務

吉永邦治画伯はいつも楽しそうである。まだお目にかかったわけではないのに、旧知の友のようにいうのは、電話でお話したり、ご著書を贈っていただいたり、展覧会のご案内やご自作の絵葉書を頂戴したりして、いつもそう感じるからである。吉永画伯は、私どもが六、七年前に作った形の文化会にも人っていただいて、京・大阪の会合などでお顔をあわせる機会があるはずなのに、ご多忙な画伯と動き回るのが趣味の私の忙しさが二乗になって、一期一会もまだなのである。
しかし両伯のお若い頃から現在に至るまでのお顔や作品は、ずいぶん見知っている。なにしろ旅行記録と思索とスケッチを兼ねた吉永画伯ならではのご著書「白と赤の十字路」「東洋の造形」などに、スナップが載っているからである。優しげな美男子で、いかにも活動的で、文字通り「行動美術」の実践者という感じである。資料もずいぶん集められて、それらを見事に整理・分類した上、想像をたくましく飛翔させていく。楽しくないはずはない。
吉永画伯は本業が画家で大学の先生の副業を持つ。小生も本業はもの書きで大学の先生を副業としているのと似ているが、当方はだんだん副業が本業化して、本業のもの書きは副業だった仕事のための論文とやらのものづくりに傾斜してしまった。となるともの書きで楽しんでばかりもいられない。なにしろ引用文献とかいろいろ気苦労な手続きを踏まねばならないからである。吉永画伯が楽しそうなのは、初心を貰いているからであろう。
しかし画伯の一見の楽しさも、かつて高野山人学に学び直すなどの、幅広いアカデミックな関心に支えられている。宗教学、民俗学、美学などにも一家言をなす。万能の普遍人、ホモ・ウニペルサーレを目指して、今後も大いにがんばってもらいたいと願っている。
形の文化会会長。
(図書館情報大学教授)

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