話し声や歌う声……
柳 井 安 代
「えーつ。お母さんがピアニストで、お父さんが画家! すごーい!」長男の智哉君と子供が幼稚園の同級で、御案内いただき、個展に二度ほど寄せていただきました。
普通の人ではとても行けないような遠い国々をたくさん旅され、土地の人々に積極的に混じっていかれ、まばゆい光や、吹き渡る風、もわもわした土埃、人々の生活の動きや佇み、話し声や歌う声などをコンクリの中にいる私たちに生き生きと伝えて下さっています。ボソボソとした布がはみ出しているような、漆喰のような、懐かしく人をホッとさせるような造りの作品もあります。
大阪へ行った時、丁度吉永先生がおられ、恐れ多くも気さくに作品を説明していただき、感激いたしました。
何本かの木立があって、数人の人が竹馬のように一人ずつ取りついて夕陽の方を見ている絵があり、「ああ、毎日夕方になると涼しい風に吹かれて夕陽を眺めてひとときを過ごす部族もあるんだなあ。そんな暮らしはいいなあ。」と思いました。先生にお聞きしたら、「隊商が向こうからやってくるのを早く見つけて、食事や物を準備して商売をするため」とのことで、シルクロードに対するロマンは、私の心の中で勝手に膨張し、部族(?)の生活を好きなように解釈してしまっていたようでした。でも、夕陽のために二、三十分時間をとる人たちがいたら素敵だと思いませんか? 『夕陽を見る人々(?)」は、誤解とともに、とても印象に残る作品となりました。
勇気と、ずうずうしさと、運の強さと人間的な魅力をすべて侍ち合わせた吉永先生だからこそ、たくさんの心惹かれる作品たちを産み出されるのだと思います。こんなにお元気にはりきっていらっしゃる方がおられると思うと、私も勇気づけられる気がします。すごいパワーでますます御活躍下さい。
チャーミングで、お優しい奥様。溌刺とした素晴しい御子息様たちは、先生のエネルギーの大事な源でいらっしゃると思います。どうぞ皆様、お元気でお幸せにお過ごし下さい。